今後の労基法改正に係る検討事項について

労働基準関係法制研究会(第14回)が11月12日に開催され、労働基準法等に関して今後改正が予定されることについて議論がなされました。

 

【労働基準関係法制研究会とは】

https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/001194504.pdf

働き方改革関連法による改正後の労働基準法等について、施行状況を勘案しつつ検討を加え、必要があると認めるときは所要の措置を講ずるものとされています。そこで、今後の労働基準関係法制や、働き方改革関連法に基づく労働基準法等見直しについて検討を行うことを目的として、厚生労働省の「労働基準関係法制研究会」が今年1月に発足し、議論が行われています。

 

【第14回 の内容について】

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個人的に気になった論点を抜粋すると…

・フレックス制における「コアデイ」の導入

(コアデイ…特定の日について始業と終業時刻を使用者が決定する制度)

・週44時間特例措置の廃止

・定期的な休日の確保(13日を超える連続勤務の禁止)

・法定休日の特定

・年休取得時の賃金算定方法の見直し

(「所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金」の手法を原則とする)

 

【感じたこと】

- 週44時間特例措置の廃止については、単純に週44時間を40時間にするだけでなく、業務量の見直しなども併せて検討すべきだと思いました。
- 「年休取得時の賃金算定方法の見直し」については、通常の賃金が原則になると、算定方法を見直さないといけない会社も出てくると考えられます。シフト制などで一日の労働時間がバラバラの場合、何時間分を通常の賃金にするか、が難しいなと感じました。

ハローワークにおけるAI活用

今回は、「ハローワークにおけるAI活用」についてです。

 

www.mhlw.go.jp

 

【概要】

- 2024年9月に、厚労省内でプロジェクトチームが発足。
- 本年度内に方針を固め、2025年度からの活用を予定。
- AIの活用検討例
ハローワークインターネットサービス上で、求職者・求人者の問合せに応じて、

  AIにより必要なサービスを案内する(コンシェルジュ的な役割)

- メリット…より的確な「ターゲティング」(対象や内容の絞り込み)と

      効率的な(人的及び経済的)資源の利用を可能にする

- リスク…倫理的な懸念(不正確なデータを AI が利用することに伴う諸問題

    (プライバシー等))、

     AI内のバイアスリスク(データ内容に応じた差別的アウトプットなど)、

     ブラックボックス化(システムのプロセスやロジックが見えなくなる)など

- 課題…透明性と説明(理解)可能性を向上させること(ホワイトボックス化)の

   重要性

   スタッフ内の抵抗感・スキル不足への対処の必要性、

   継続的な監視・評価の必要性など

 

【感じたこと】

ハローワークは無料で使えるサービスのため、AI活用で質が上がるのは良い事なので、その効果に期待したいです。

最近は、求人側と求職者側のマッチングがうまくいかず、採用してもすぐに離職してしまうケースも多いと聞くので、AIにより、そのマッチング不足を少しでも解消できたらよいと思います。

ただ、AIだけに頼らず、紹介された会社が本当に自分に合っているのか…は、しっかり自分自身で考え、不明点は先方にしっかり確認し、お互いが納得したうえで入社(採用)する、という流れは意識するべきだと思いました。

ストレスチェック50人未満事業場への拡大について

労働政策審議会安全衛生分科会にて、「今後のストレスチェック制度の在り方(案)」が示され、ストレスチェックの実施対象を、産業医の選任義務のない50人未満事業場に拡大することとされました。

 

https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/001324704.pdf

 

具体的な提起内容としては、以下の通りです。

- 実施対象を50人未満事業所に拡大
- 実施結果の監督署への報告義務はなし
- マニュアル作成や地域産業保健センターの体制強化など支援体制を整備
- プライバシーの観点から外部委託を推奨

感じた事

50人未満の会社で高ストレスの人が出た場合、医師の面接指導は地域産業保健センターへの依頼になると思いますが、対象者が増えて面接までの時間がかかる事も予想されるため、医師の確保などの体制強化が必要だと思いました。

ストレスチェックはもちろん重要ですが、やって終わりにならないように、メンタル不全の未然防止に繋がるような取り組み、支援を考えていかないといけないと思います。

レジャー白書について

今回は、公益財団法人日本生産性本部の、レジャー白書について書きたいと思います。

www.jpc-net.jp

<「レジャー白書 2024」の主なポイント>

・日本人の余暇活動の現状

 国内観光旅行が 2 年連続の首位、 一人当たり平均参加種目数は微増 

 

・余暇活動の参加人口は

「国内観光旅行(避暑、避寒、温泉など)」が首位。

「外食(日常的なものは除く) 」 が2 位。

「動画鑑賞(レンタル、配信を含む)」

「読書(仕事、勉強などを除く娯楽としての)」など在宅レジャーも引き続き上位。

外出を伴う種目をはじめ、多くの余暇種目で参加人口の増加がみられる。 

 

・仕事より余暇を重視する回答者の割合が年々増加。

 回答者の約 3 分の 2 が余暇を重視している。

 

<感じたこと>

余暇を重視する人が増えているのは、昔に比べて、会社のためというより自分のために時間を使う人が増えたからかなと感じる。

どちらを重視するか、はその人の価値観なので、余暇を重視する人が増えることも問題はないと思いますが、そうした中でも、仕事においても自分なりの目的・目標を見つけて、前向きに取り組んでもらうため、会社としても、何か取組をしていく必要がある、と感じました。

令和6年版「過労死等防止対策白書」について

今回は、令和6年10月11日に公表された、「過労死等防止対策白書」について

まとめます。

 

www.mhlw.go.jp

 

〇過労死等防止対策白書とは

  過労死等防止対策推進法に基づき、毎年、国会に報告を行う法定白書

 

〇令和6年版白書のポイント
「過労死等の防止のための対策に関する大綱」(令和6年8月2日閣議決定)で

調査研究の重点対象とされている業種等(医療、芸術・芸能分野)や、

調査研究の必要性が指摘されているDX等先端技術担当者の調査分析結果を記載

 

〇過労死防止のための政策の実施状況(抜粋)

■労働行政機関等における対策

 ・長時間労働削減に向けた取組の徹底

  …長時間労働の見られる事業場への監督指導、本社への改善指導、企業名公表等

 ・医師の面接指導の確実実施、メンタルヘルス対策、ハラスメント防止、

  過労死再発防止等に関する指導を実施

■調査、研究

■啓発…大学等への講師派遣やeラーニング教材公開、長時間労働抑制、

    メンタルヘルス対策、ハラスメント防止など

■相談体制の整備…労働条件相談ほっとライン、こころの耳、

        ハラスメント悩み相談室、フリーランス・トラブル110番など

 

〇感じたこと

 ・長時間労働削減が重視されているということで、今後、労基署の調査において、長時間労働が一層厳しく指導されることになるかもしれない…と感じました。

 ・大学等への啓発は有効だと思います。働く前の学生たちにも、このような知識を知ってもらい、自分のことは自分で守れるようにしておいてもらうのも良いのかもしれません。

【30歳以下の若手管理職に関する調査】Vol.3 マネジメントの悩み編 

今回は、「株式会社あしたのチーム」の、【30歳以下の若手管理職に関する調査】Vol.3 マネジメントの悩み編について書きたいと思います。

この調査は、30歳以下で管理職2~3年目の若手管理職に対し、

意識・実態やマネジメントの悩みなどを調査したものになります。

www.ashita-team.com

【調査結果の概要】

●管理職の悩み…1位「チームの人材不足」30.1%、2位「部下のモチベーション管理」27.8%、  3位「部下とのコミュニケーション」・「自身のスキル不足」26.4%。

一方、最も回答割合が少ないのは「組織内の政治や人間関係」15.3%。

●「管理職をやめられるならやめたい」が55.1%で半数以上。  理由は「仕事量やストレスに対して報酬が低すぎる」「長時間労働でプライベートが疎かに」

●先輩管理職の上司を真似したいこと

「いっぱいいっぱいになっている時に声かけしてもらったこと」

「仕事で悩んだときに一緒に考えてくれたこと」  反面教師にしたいこと

「気分で接し方を変える」「部下の意見を無視」「忙しいからと部下の相談に取り合わない」

【感じたこと】

管理職をやめられるならやめたいと思っている人が多く、悩みを抱えている若手管理職が多いことがうかがえます。若くして管理職になった左潰れてしまうケースもあるので、会社が若手管理職をフォロー(普段からの声掛けなど)するという意識も必要だと思います。

また、報酬が低すぎる…という点について、もし年功序列型給与体系のために低くなっているのだとしたら、年齢が若くても、職責に応じた給与を適切に払う必要があると思います。

先輩管理職を真似したいこと・反面教師にしたいこと…の内容から、今求められているリーダー像は「先頭に立って引っ張っていく」「強いリーダーシップ力」というよりも、「部下に寄り添い、一緒に考える」ような人だと感じました。このことを、若手以外の管理職に周知して対応の参考にしてもらうのも有効かなと感じました。

中小・中堅企業の事業課題・人材課題に関する調査「人材定着編」

今回は、株式会社リクルートの「中小・中堅企業の事業課題・人材課題に関する調査「人材定着編」」について、その中で中小企業の結果をまとめてみます。

www.recruit.co.jp

 

【結果の概要】

【1】人材の定着状況

・正社員全体では、「定着できている」が57.6%

・若年層について、「定着できていない」が30.7%

 

【2】人材定着に向けた人事制度面の取組

・人材定着の取組として実施しているもの

「能力や適性に応じた昇進・昇格」

「成果や業務内容に応じた人事評価」など

 

・人材が「定着できている群」は、働き方に関する取組の実施率が高い

(「業務時間の柔軟化」や「時間外労働の削減・休暇の取得推進」など)

 

・残業時間が長いほど人材定着ができていない傾向

 

【3】人材定着に向けた職場環境の改善

・人材が「定着できている群」の方が高かった項目は

「上下関係にとらわれず意見を出しやすい」

「従業員間のコミュニケーションが活発」

 

・若年層の社員が「定着できている群」と「定着できていない群」で、

「経営者が人材の活躍に対して積極的に取り組んでいる」に大きな差あり

 

【感じたこと】

職場環境の改善は、重要とは分かっていても改善までに時間もかかる…

まずは、比較的取り組みやすい、働き方に関する取組の実施

(「業務時間の柔軟化」や「時間外労働の削減・休暇の取得推進」)から

始めるのもありかなと思った。

 

そして特に印象に残ったのは、

「若年層の社員が「定着できている群」と「定着できていない群」で、

「経営者が人材の活躍に対して積極的に取り組んでいる」に大きな差」という部分。

やはり、経営者が自ら取り組む姿勢をはっきり見せる事が大事だと思う。

トップが「社員の事をちゃんと考えている」

「社員のために何かしようとしてくれている」と

社員に伝われば、

社員のモチベーションやエンゲージメントが高まると思う。

 

トップがそういう「姿勢」を見せる事は、今すぐにでも始められると思うので、

積極的に進めていくと良いのでは、と思った。